ニュースのポイント
大手商社とコンビニが関係を強めています。商社2位の三菱商事がローソンを子会社化し、トップの伊藤忠商事はファミリーマートとの協力関係を深めます。商社とコンビニって、そもそもどんな間柄なんでしょう? 双方の関係を知ることで、それぞれの業界の現状や事情が見えてきます。関係強化は双方にメリットがあります。いずれを志望する人も知っておいたほうがいい情報です。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(8面)の「商社、コンビニに注力/安定収益に期待 経営基盤強化狙う」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
商社ビジネスのいま
総合商社は「ラーメンからロケットまで」と言われるほど多様な分野で商売をしています。中でも、多くの商社は資源・エネルギーがビジネスの柱でした。鉄鉱石や銅などの金属、石炭や天然ガスなどの燃料です。中国経済が伸び盛りだった最近までは需要が増えて高く売れましたが、成長のペースが落ちて需要が減り、価格も急落しました。
今の資源ビジネスは、産地で買い付けて需要地で売る単純な貿易だけではありません。鉱山や油田の開発事業自体にお金を出して運営し、もうけるビジネスです。巨額の投資をしてそれに見合う巨利を得てきましたが、資源安や開発の失敗があると、損も巨額になります。
資源から非資源重視へ
三菱商事は2016年3月期決算で1494億円の純損失を出し、食料や繊維に強い伊藤忠に「総合商社トップ」の地位を譲りました。その後、資源価格が上がり2017年3月期は4400億円の純利益となる見通しですが、国際情勢などで大きく変動する資源頼みの事業構造を、「非資源」や生活に身近な小売り分野を強化することで変えようとしています。
そこで今回の動きです。三菱商事は、1440億円かけてローソンへの出資比率を33.4%から50%超に高めて子会社化します。三菱商事はコンビニで扱う食品や弁当容器などの原材料調達や加工など幅広い事業を手がけていますから、今後は三菱商事が原材料をより安く買い付け、コストを下げてローソンの競争力を強化する狙いです。伊藤忠も、約34%を出資するユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)への関与を強め、調達や物流面で協力関係を深める方針です。コンビニビジネスは安定した収益が見込めるため、商社にとってはメリットが大きいわけです。
3大コンビニの競争
一方、コンビニ側の事情はどうでしょう。コンビニの経営は、店舗数が多いほうが仕入れや商品開発を効率化できるため、有利です。トップはセブン-イレブン・ジャパンの約1万9000店ですが、ファミマは昨年のユニーとの統合で約1万8000店になり、セブンに迫りました。両社より5000店以上少ないローソンは苦しい展開です。店舗数は一気には増やせないため、三菱商事の子会社になって競争力を高められます。
ローソンの玉塚元一会長は、三菱商事との関係強化について、週刊誌アエラ連載のコラムで「サプライチェーン」「商品力強化」「海外展開」で競争力が高まると強調しています。具体的には、ローソン専用工場をもつパートナー企業との協力、三菱商事傘下のスーパーとの共同調達、アジアでの店舗拡大で三菱商事の海外ネットワーク活用――を挙げます。
王者セブンは?
これに対しコンビニ業界トップのセブン-イレブン・ジャパンは、1.8%の出資を受ける三井物産と協力関係にあります。ただ資本関係が薄い分、商品開発などで複数の商社やメーカーを競わせてもいます。
商社もコンビニも、それぞれの会社によって得意分野や力の入れ方が違うことがわかりますね。今日のようなニュースから、会社の個性をさらに深く研究してみてください。ESや面接のネタになりますよ。
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